当院の体外受精の特徴 その② 時間
数年前、いくつかの有名なART施設を見学させていただいたことがあります。共通していたのは、朝8時くらいから採卵する、ということです。実は、これは、採卵前に打つ注射の時間に関係があります。コントロールされた周期では、GnRHa周期であろうと、antagonisit周期であろうと、HCGの注射を35~36時間前に打ちます。午前8時の35時間前は、前々日の午後9時です。もし、午後1時採卵にすると、前日の午前2時になってしまいます。これは、ビル診療では不可能な話で、患者さんも迷惑です。そこで、朝の採卵となっているようです。クロミフェン周期でよく使われるフレアアップという方法を用いると注射の必要がありませんが、これも時間は同じですから、似たような事情で、クロミフェン周期でも朝採卵となっているのでしょう。
しかし、仕事をもつ患者さんの立場になって考えてみると、朝早くからクリニックに行かなければなりません。旦那さんも出勤前に慌しく精子提供です。採卵に静脈麻酔を用いると、午後から仕事がやっとです。局所麻酔も止血原理(採卵では卵巣表面の止血は自然止血なのです)は一緒ですから、本来何時間かは寝ていた方が無難でしょう。
そう考えると、仕事後に採卵するパターンがあってもよいのでは、と考えました。また、当院は、「1人の患者さんに対し集中したい」「卵や精子の取り違えを物理的にゼロにしたい」「最高の医師と最高の培養士の組み合わせは施設あたり一組しかいない」という考えから、時間帯あたりの採卵・胚移植を1人に限定しています。
そこで、当院の体外受精の特徴は、フレキシブルな時間としました。つまり、
朝8時半からの採卵・胚移植、午後1時からの採卵・胚移植、午後4時からの採卵・胚移植、午後8時からの採卵・胚移植の4通りのパターンが可能です。
午後8時からの採卵の場合、ご夫婦とも通常のご勤務を終えてから来院していただいてO.K.です。採卵が終わって眠っていらっしゃる奥様にずっと付き添ってご一緒にお帰りください。
午後8時から採卵するためには、HCGの注射は前日の午前9時に行います。静脈麻酔を受けられると午後11時くらいにクリニックを出ることになりますが、たとえお1人で帰られることになっても近鉄四日市駅前徒歩2分の距離ですから問題ありません。近鉄も長距離バスも動いていますし、タクシーもすぐつかまえられます。当院の胚培養士は、夜型人間で、媒精作業が午前様になっても最高のコンデションで行えます(翌日は午後出勤です)ので、この時間帯での採卵が実現しました。
ついでですが、外来も午後8時まで受付していますので、注射も勤務終了後にきていただけます。